2015年3月3日火曜日

乱取り

柔道の練習に乱取りと言うものが有ります。広辞苑を開いてみますと「柔道で、各人が自由に技(わざ)をかけ合い練習すること」とあります。練習畳の上で、大勢の人が組み合って練習をしています。技を磨く練習をしているのです。

当然のこと、技を習って、その技を磨いているのです。技を習わずに、畳の上で柔道の真似をしていて、技量が上達するでしょうか。このことは、雑詠の句会に似ています。各人が作った雑詠句を持ち寄って、句会と言う畳の上で発表し、互選をする。各人が持ち寄った句には、写生句も有れば余情の句も有ります。見たままの句も有れば、詩情に富んだ句も有ります。このような畳の上で、技が磨けるでしょうか。

先日のある講座で、相当実力のある方が、兼題で詠むのは初めてです、と仰っていました。何のために兼題があるのか。それは一つ一つの技を磨くためです。季題という技を磨くのです。全員が同じ技を出し合う事によって、未熟な人はベテランの技を習います。なるほど、この季題はこう読めば良いのか、と感得するのです。

柔道で、例えば全員が背負い投げを習うとしましょう。師範の指導で、襟の取り方、袖の持ち方という基本を身に着けます。足の運び、腰の使い方。全ては、背負い投げという技を完成させるための訓練です。一渡り習って、さて実際に組み合って技を掛けあいます。これが乱取りです。技を完成させる、実地訓練です。

皆さんは、雑詠句を句会に持ち寄り、互選して終わっていませんか。畳の上でドタバタするだけで終わっていませんか。これでは何十年俳句をしても、上達は見込めません。兼題により技の基礎を習い、この技を句会で磨く。師範から厳しい注意を受けながら磨きます。甘い選者に採って頂いて喜んでいるのは大怪我のもと。怪我は慢心から生まれます。

毎回席題をお出ししている句会が幾つかあります。席題で詠む事を通じて、その季題の勉強をするのです。席題と聞いて怯える人も有りますが、最初から完璧に出来る技は有りません。出来なくて当たり前なのです。技を習う事に怯えてはなりません。

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