俳句に用いる言葉を俳語と言います。俳言という古い言葉がありますが、これは広辞苑によれば「俳諧に用いて和歌や連歌には用いない俗語・漢語の総称。」とあり、今回の俳語とは別のものです。俳句では、例えば、朝食の事を朝餉、弁当の事を行廚(こうちゅう)、お土産を家苞(いえづと)、自転車の事を銀輪などと表現します。私が最初にお世話になった師匠古澤碧水は九年母同人で西宮俳句協会の会長でしたが、このような古い俳句用語、すなわち俳語を沢山教えて頂きました。碧水に師事したのが37歳でしたので、今と違ってどんどん頭に入りました。今ではあまり使うことがない「もして」という止め方も習いました。「買いもして」・「行きもして」というような止め方です。
しかし、俳語は日進月歩。現代では、伝統俳句の句だと言いながらも、テレワークやソーシャルディスタンスという外来語を使った俳句や、PCRなどのアルファベットを使った句が見られます。それも相当な名人が使っておられます。こんな中で、朝餉だとか行厨などと、古い言葉を使っていて良いのでしょうか。カメラを写真機と言うのは未だ辛抱できますが、自転車を銀輪というに至っては、戦時中の部隊名に有ったような、古色蒼然とした感じがします。
そろそろ考えないといけないのではないでしょうか。かと言って、朝餉を朝食というような代替の案が有れば良いのですが、昼餉をいきなりランチというのもどうかと思います。昼餉は昼食で。俳句雑誌や新聞の俳壇などに普段から注意して、使えそうな言葉があれば取り込んでゆくのが良いでしょうか。控えておいて使ってみることです。言葉は時代と共に変化していきます。その変化に付いていくことが大切です。俳句は古い文芸だからと言って古い言葉に固執していては、若い人たちが、やがて俳句から離れてしまうでしょう。
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