四季吟詠の選、俳句四季全国大会の選、そして住吉大社の松苗神事献詠俳句の選が終わり、例月の主宰の業務に戻りました。今日は久しぶりに再開された大阪支部の例会に参りましたが、皆様熱心に取り組まれ、熱の籠った句会になりました。やはり句会は楽しいものです。
さて、先日、ある句会で「山笑ふ」という兼題が出され、山が様々に笑いました。しかし、こんなことで本当に山が笑うかと思う句も有りました。清記から参考に使わせて頂きます。
けん玉のギネス達成山笑ふ
という句。けん玉の技でギネスの新記録に挑戦し、達成したのでしょう。句の内容は良く分かるのですが、「山笑ふ」という季題が効いているかどうかという事が問題です。山は春になって雪が解け、空気が温んで木々の新芽が吹いて来ると笑い出します。見たことは有りませんが、若い女性が微笑むように笑うのだそうです。
山は春に笑うとされています。そのために俳句では、山が春になったことが分かるように、お膳立てをしなければなりません。舞台設定です。春になったので、どうぞ笑って下さい、と。これは単に山のためだけではなく、読者のためでもあるのです。山が笑うことを読者が納得してくれないと、山は笑えません。なるほどこういうことだから山が笑うのだと、読者が納得してくれる、そのためには季節感が大切です。春らしい季節感のある舞台でなければならないのです。そこで掲句を振り返ってみましょう。けん玉でのギネス記録の達成は、春に限ったことでしょうか。ギネス達成に、季節感が有るでしょうか。
整はぬ鳴き声に山笑ひけり 伸一路
この句の「整はぬ鳴き声」とは、もちろん鶯のこと。春の季節感を、幼い鶯の鳴き声で演出してみました。ヒーホケホケとか、ヒーホケピチョとか、舌足らずに鳴くものですから、思わず山も笑い出すのです。舞台設定を怠らない事、そうすれば山は笑います。
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