「かな」という助詞は、「や」・「けり」と同様、俳句の世界では切字として多用される助詞の一つです。一般的には「かな切れ」と呼ばれ日常的に使われているのですが、使い方に注意が必用です。例えば、
① 浮き寝鳥押し分け進みフェリーかな
② 夕映の野良の冬耕影絵かな
この様な句があったとしましょう。これらの句と次の句とを比べてみて下さい。どう違うでしょうか。
③ 浮き寝鳥押し分け進むフェリーかな
④ 夕映の野良冬耕の影絵かな
先ず、①は中七の最後の「進み」で切れています。それなのにまた下五で「かな」と切ると二度切れになります。俳句の切れは一か所とするのが基本です。③を見て下さい。中七が「進む」となっており自然に「フェリー」に繋がって行きます。「進むフェリー」なのです。そうなると「かな」と切ってもおかしくありません。「進むフェリーなのですよ」の最後の「なのですよ」の部分が「かな」なのです。
②の句は中七の最後が「冬耕」で切れています。ところが下五でまた「かな」と切れますから二度切れになってしまいます。上でも述べましたように俳句の切れは一度が基本ですから「かな」は使えません。④を見て下さい。中七は「冬耕の」と「の」が入ると自然に「影絵」に繋がって行きます。つまり「冬耕の影絵」となり、上記で述べたように「冬耕の影絵ですよ」という意味で「冬耕の影絵かな」となります。
月間「俳句界」の先月号の雑詠選「ここを直せば入選」欄で、辻桃子先生が「『黒髪』の名詞で切れるので『かな』止めではなく『なる』とする」と書いておられるのは、このことです。この原則が分かれば正しく「かな」が使え、投句の入選率が飛躍的に良くなるはずです。良く理解して、「かな」切れを正しく使いましょう。
次の句は、とある句会で出されものです。「かな」切れが正しく使われているでしょうか。また、正しい「かな」切れにするにはどうしたらよいでしょう。
日溜りに解け明日へと冬芽かな
耐へ忍ぶ時を過ごして冬芽かな
また、雑誌や新聞などで「かな」切れの句が目に入ったら、正しく使われているかどうか、確認してみましょう。
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