2025年4月26日土曜日

研究発表会の事

 大阪俳句史研究会からご依頼いただきました、私の研究発表が、本日無事終了しました。

今回は代表理事の三村純也先生からご依頼をいただいていた「五十嵐播水 その人と作品」というテーマの研究発表でした。持ち時間は1時間30分。続いて質疑応答の30分。聴講者は30名。

持ち時間の1時間30分は、あっという間に過ぎてしまいました。その間喋り詰め。時折小話や冗談を挟み、笑い声が聞こえて来るのを確認し次に進みおます。播水の生い立ちや、少年時代の逸話。医師への道を勧める父親と外交官を志す播水の心の葛藤。虚子や野風呂・草城・誓子たちとの交流。医師としての播水のこと。最後は70年の長期にわたって九年母の主宰を続けられた要因、など多角的に分析してお話しました。ご理解頂けたかどうかは分かりませんが、「九年母」と播水に関する関心が高まったという手応えは感じました。

最期に純也先生が「ホトトギスでも播水を見直す必要を感じる」と述べられたことが印象的でした。会報に載せるため原稿用紙30~50枚程度の文章にして提出するように依頼がありましたので、まだまだ仕事が続きますが、今日の所はひとまず成功裡に終わったと喜んでいます。

地元の伊丹や西宮、灘区・東灘区から沢山の九年母会員の方が聴講に来て下さいました。厚く御礼申し上げます。

2025年4月22日火曜日

千鳥句会のこと

千鳥句会という吟行専門の句会が有ります。JR六甲道駅に隣接したメイン六甲というビルに六甲道勤労市民センターというカルチャーセンターがありました。現在は運営母体が変わり灘区文化センターという名前になっていますが、いずれも神戸市の外郭団体により運営されています。

平成17年4月に六甲道勤労市民センターの俳句入門講座の受講生のための、吟行専門の勉強会として、千鳥句会を開設しました。一方、野鳥句会はこの講座の受講生が季題に基づいて実践的な勉強をするための句会として開設しました。当初は、つぐみ句会とひよこ句会、こばと句会という三つの勉強会だったのですが、私の「九年母」主宰就任に伴って合併し、野鳥句会として再出発したものです。

中でも千鳥句会は、関西だけではなく、東京、鎌倉、田辺、松山、出水など全国各地に吟行に出掛け、俳句の研鑽に励むとともに、会員の親睦を図って来ました。やがてこの会員の皆さんが、私の「九年母」主宰就任に伴って編集部や同人会など会の中枢部の仕事を担当していただくことになったのです。

千鳥句会の吟行は独特で、集合から解散まで団体行動をします。九年母の従来の吟行は個人やグループが適当な時間に出掛け、好きなところを回って吟行していました。ところが千鳥句会は、全員が同じ時刻に集まって、主宰と共に行動します。同じものを見、同じ音を聞き、同じ感動を共有するのです。そうすることによって、吟行の仕方が学べます。自分が詠めなかった感動を、同行の人の句から学びます。この方法が20年続いているのです。

千鳥句会はカルチャーセンターの俳句講座の勉強会として発足したのですから、九年母会員でなくても、誰でも参加で来ます。他の結社の方も居られます。飛び入り参加も大歓迎です。一緒に吟行し、一緒に学びましょう。

2025年3月18日火曜日

松苗神事献詠俳句祭の結果(速報)

 本日午前10時より、大阪の住吉大社吉祥殿にて、毎年恒例となっている松苗神事献詠俳句の最終選考会がありました。選考会の選者は俳誌「かつらぎ」の森田純一郎主宰、俳誌「未央」の古賀しぐれ主宰と私。かつては5名で務めていましたが、現在は3名になっています。

今回の応募句の総数は505句、その中から3名の選者による予選を経て最終選考に残った句は17句。最終選考に残る確率は3.4%と厳しき門でした。各選者が、自分が選んだ20句に5点から1点の点数をつけ、5点句を2句、4点句を3句、3点句~1点句を各5句それぞれ選びます。最後に3名が選んだ句を各句ごとに点数を合計し、上位の句から並べて順番に審査をして行きます。今回は最上位2句が共に10点でした。この句は類想句が有るとか、この句は季が動くとか、厳しい意見が飛び交いました。

最終選考に残った17句の内7句が九年母会員の句でした。事務局の神職さんから「この人も九年母?」という声がしばしば上がっていました。各結社の入賞・入選者数はそれぞれ2~3名でしたが、九年母は6名でした。その結果は以下の通りです。

   地賞 歌人の心を今に苗木植う     岸本悦子

   入選 苗木植う地震にも耐ゆる水の星  島崎すずらん

   同  苗木植ゑ千年さきの星語る    小柴智子

   同  復興へ弛まぬ歩み苗木植う    長谷元子

   同  停戦の足音しかと苗木植う    末永拓男

   同  歴史秘む社の大樹風光る     藤澤みか子

表彰式は4月3日、第一本宮での報告祭の後、吉祥殿で執り行われます。入賞・入選の皆様にお祝いを申し上げます。次は秋の観月祭です。頑張りましょう。

2025年2月16日日曜日

スカンク

 米国にはskunkという言葉があり、スカンクと読む。広辞苑を引いてみると①には動物のスカンクが載っている。敵に襲われた時に、猛烈な悪臭を発して敵から逃れる、あの動物だ。そして②に「競技で、無得点で敗れること。零敗。ゼロゲーム。スコンク」とある。

今回の話題はこの②の事。句会に出て、互選にも選者選にも一点も入らない時がある。今年の「九年母全国新年俳句大会」では、私の出した3句は見事にスカンク。誰も採ってくれないので、淋しい思いがした。その昔、摩耶山俳句大会で、代表選者の汀子先生の句がこのスカンクに襲われた。好評の最後に先生が「今日は口淋しい一日でした」と言われ、会場中が大爆笑した思い出がある。なるほどそう言えば良いのかと、妙に感心した。

誰だってスカンクは嫌だ。そんな時に心が折れないようにするためは、その日の自分の選を振り返ればよい。今日の自分の選はどうだったか、選者の特選の句は採れたか、普通選の句はどうだったか、日頃から尊敬している先輩の句は採れたか、と。選者の特選の句が3句採れた。先輩の句が2句採れた。これは嬉しいことだ。今日駄目だったのは、夕べの夢見が良くなかったのだ。朝からお腹が痛かったのも原因かも。だけど今日は良い選が出来た。こう思えば何ということもない。よし、次からはもっと良い選をしようと思って頂ければ最高である、

自分の作品の成績にばかり汲々としていると、底のない井戸に落ちてしまう。作句力と選句力とは車の両輪。どちらが欠けても車はまっすぐには走れない。自分の選の力も、意識して磨いて行ってほしい。

2025年1月30日木曜日

鳥帰る

 「鳥帰る」という言葉を「ホトトギス俳句季題便覧」で検索すると春三月の季題となっている。昨日、拙宅の近くを流れている宮川の河口付近を散策していたら、つがいのヒドリガモが群れになって泳いでいた。帰る途中なのだ。何故分かるか。それは「つがい」がヒントになる。

日本に渡って来た時はつがいを形成していない。オス・メス混成でシベリヤから渡って来る。それが日本で冬を過ごす間につがいが出来る。越冬の終わりの頃には、ほとんどの鴨がつがい単位で餌をあさっている。集団に見えるのは、このつがいが集まっているだけで、集まったからといって、つがいが壊れることは無い。必ずオスとメスがつがいになる。生物にとって子孫を残すことは究極の価値なのだ。

このようなつがいの集団が大きくなって、やがてシベリアに向って飛び立ち、彼の地で産卵し子育てを行うのだ。その頃にはオスの羽はメスと同じ色に生え変わり、外敵に対して保護色となる。従って、シベリアの人は鴨のオスの、あの美しい姿を知らないのだ。

日中、何組かの鴨のつがいの集団を見かけ、翌朝いなくなっていたら、北へ旅立ったと解釈して間違いない。鳥帰るとはこのことだ。地球温暖化の影響でシベリアが暖かくなってきており、渡って来るのが遅く、帰って行くのが早くなってきている。3月では遅すぎるのかも知れない。これからは毎朝の探鳥(探鴨)が楽しみだ。

2025年1月13日月曜日

新年の事業の成功

 昨年末に体調を崩し、「恙身に年酒と言へど許されず  伸一路」という状態でしたが、1月8日の汀子生誕祭俳句界の司会と選者をこなし、12日開催の九年母全国新年俳句大会を無事終えました。汀子生誕祭俳句界には各結社から96名の参加がありました。九年母会が当番に指名され、編集部を中心に6名の女性方に披講などのお世話を頂きました。句会ではこの6名全員が稲畑廣太郎先生の選に入り(内2名の方は特選)、大いに意気が揚がりました。

この句会では、参加された他結社の方の、九年母会に対する見方が変わったと感じました。これは創刊100周年記念事業の成果だと思います。関西ホトトギス同人会の事務局の重鎮の方が、「九年母さんがこんなに古い結社だったとは知らなかった」とつぶやかれたのが印象的でした。

九年母新年俳句大会には44名の会員の参加があり、大いに盛り上がりました。会が始まるまで須磨寺を吟行された方も沢山おられました。播水の句碑を拝見したり、本坊前の庭の寒牡丹を見たりと句材も豊富にありました。九年母賞受賞者や選者特選賞を受賞された方の表彰や、新推薦作家、新同人の披露等の華やかな行事の後、美味しい食事を頂きました。その後句会に入り、有意義な時間を過ごしました。

私の主宰就任の翌年の正月から初めて今年で9回目。句会にはちょうど良い人数です。今年参加できなかった方も来年は是非ご参加ください。これで年初の大きな事業が終わりましたので、もう暫く静養をさせて頂きます。

2024年12月14日土曜日

漣月集の購読について

 この度の九年母創刊百周年記念祝賀事業の一環として刊行しました私の随筆集「漣月集」を、紀伊民報社で購入の取り扱いをして頂けることになりました。またそのための広告も計画して頂いているとのことで、喜んでいます。

先般の百周年記念祝賀会に参加された方には一冊づつお渡ししました。また当日ご欠席の方で高額の祝い金を頂きました方には別途お送りする予定です。その他の皆様にもお分けできますので句会単位でお申し込みください。句会に入って居られない方や九年母会員でない方でもお受けしていますので、下記までご連絡下さい。消費税・送料込みで一冊1500円です。

      080-1526-6932  小杉

ご連絡をお待ちしております。なおご好評を頂きました「俳句四季」掲載の『レジェンド我が源流 五十嵐播水』三部作は、時期を見て九年母誌に掲載の予定です。ご期待ください。