先日の講座で、こんな句がありました。
冬帽をコートに合わせ街に出る
冬帽子もコートも季題ですから、季重なりの句ですが、冬帽子とコートとの組み合わせに気を遣うなんて、なかなかおしゃれな作者です。ですが、伝統俳句を志向する私たちにとっては、見過ごせない問題があるのです。それは「コート」という季題です。
ホトトギス新歳時記を開いてみますと、「コート」という季題には「女性の和服の上に羽織る防寒着である。洋装用のコートとは違う。」と書いてあります。とすると、掲題の句は和服に冬帽という姿を詠んだものになります。しかし和服に帽子は変ですね。これに対して、「外套」という季題を調べてみますと、「洋服の上に着る防寒具である。オーバー。」とあります。つまり、ホトトギスの世界では、冬帽は、コートではなく外套に合わせなければならないのです。
角川合本歳時記ではおおらかで、外套が主題としてあって、コートはその傍題。「防寒のために服の上に着る衣服。厚手の生地が多い。以前はコートというと和装のものをさした。」とあります。一体どうすれば良いのでしょう。
要は慣れの問題です。私はホトトギスの人間ですから、和装ならばコート、洋装ならばオーバー(コート)と使い分けます。それに慣れれば、そう深刻に悩む事はありません。掲題の句、
オーバーに合はす冬帽街に出る
とすれば洋装に一変します。
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