先日、ある句会でこんな句が出ました。
大鮪漁師の気負初戎
西宮神社の初戎には、近くの漁業組合から例年大きな鮪が奉納されます。初戎にお参りした人々が祈りを込めて、この鮪に十円などの硬貨を貼り付ける慣わしがあります。奉納されるのは毎年8日。この時点では未だ霜に覆われて真っ白。ところが空気が乾燥しているので、鮪の皮膚も乾きます。そのため、時間の経過とともに硬貨が貼りつかなくなってくる。硬貨がコロコロとこぼれると運が身に付かないといいますので、皆さん必死の思いで貼り付けています。
以前は地中海産の大きな鮪が奉納されていましたが、資源の枯渇に関する世界的な動きも影響しているのでしょうか、最近では近海産のやや小ぶりになりました。それでも毎年、法被を着た組合の方々が、軽トラックに載せて意気揚々と運んで来られます。
ところで、掲題の句、漁師と言いますか漁業関係者の気負いは感じられますが、句の流れが途切れ途切れになっています。
大鮪/漁師の気負/初戎
と句の流れが止まるのです。いわゆる三段切れと呼ばれる詠み方になっている。ならば、上五の大鮪の次に「は」という助詞を挟んでみたらどうでしょう。流れがスムーズになりますね。
大鮪は漁師の気負初戎
上五の字余りは、あまり気にはなりません。昔、「重い荷物は網棚へ」と先輩に習いました。どうしても字余りになる場合は、上五に持ってくると良い、ということです。逆に、上五の助詞を省略できるのは、どんな場合でしょうか。同じ句会の句で、
寒の水汲み一服とすすめくれ
寒の水のみて心身引き締まり
どちらの句も、上五の次に来る「を」が省略されています。
寒の水(を)汲み一服とすすめくれ
寒の水(を)のみて心身引き締まり
俳句は助詞一つで変わります。それだけに、助詞の使い方はむつかしいものです。良く推敲して下さい。なお、「鮪」は冬の季題ですが、掲句の場合は初戎が主題になるので、季重なりは気にしなくてよいでしょう。
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