ある句会でこんな句がありました。
さくさくと薄氷リズム楽しけり
句の出来具合は別にして、この表現の間違いはよくあります。どこでしょう。そう、下五の「楽しけり」という表現です。
薄氷をふみて掃除にはげみけり
この句の「はげみけり」という表現とどう違うでしょう。この句の最後の「けり」は、「励む」という動詞の連用形に接続していて、文法通りの正しい使い方です。ところが、最初の句の「けり」は、「楽し」という形容詞に付いており、これは正しい使い方ではありません。何故なら、「けり」という助詞は、動詞の連用形には付きますが、形容詞には付かないという性質があるからです。従って、「明るけり」「悲しけり」「美しけり」等も同様に誤りです。形容詞に付ける場合は、前に「かり」を付けて、次のようになります。
楽しかりけり ・ 明るかりけり ・ 悲しかりけり ・ 美しかりけり
しかし、これを最初の句の下五に使うと、字余りになってしまいます。
通学の足裏に踏みてさくさくと薄氷リズム楽しかりけり
短歌ならこれで良いでしょうが、俳句の場合は、「けり」を取った、次の形にします。
さくさくと薄氷リズム楽しかり
「楽しかり」は、楽しくあり、ということです。
ありがとうございました。同じ間違いをするところでした。
返信削除とても分かりやすく助かりました。