今日は昼から、九年母会の名門句会の一つ、五葉句会の例会が、神戸の婦人会館で開催されました。参加者は19名と盛況でした。兼題は毎回2つ出されるのですが、今回は「夕凪」と「茗荷の子」。いずれも難しい題です。今回はその内、夕凪について考えてみましょう。
夕凪とは、夏の夕暮れ時に、一時的に風がピタリと止んで、耐え難い暑さに見舞われること。暑くて家の中には居れず、縁先などに床几を出して夕涼みをします。海と陸との温度差により、昼間は海から陸へ、逆に夜間は陸から海へ風が吹きます。海風、陸風と呼びますが、朝夕の一時期、海と陸と温度差が無くなる時があります。すると、空気が動かず。朝凪、夕凪という現象が起こるのです。私の住んでいます芦屋の海辺では、夏場は毎日この現象が見られます。
単に夕方に風が止まること、ではありません。その結果として、じっとりと汗の滲む暑さに見舞われるのです。鬱陶しい事この上ない、しんどい事。ここがこの季題の大切なポイント。マイナスベクトルなのです。この思いを踏まえて詠まないと、夕焼という季題と区別がつかなくなります。夕焼は、明日への希望を内蔵する、プラスベクトルの季題です。今日の句会で、こんな句が有りました。
夕凪の海峡通る油槽船
互選の特選にも採られていました。明石海峡を通過するタンカーを詠んだ句でしょう。夕凪で波の静かな海峡を、巨大なタンカーが静々と航きます。まことに美しい景色ですが、季題としての夕凪は、意味が違います。夕凪の本質は、じっとりと汗をかくような、鬱陶しい暑さに有ります。掲句はむしろ、
夕焼の海峡通る油槽船
ではなかろうか、と想像します。タンカーは、明日のより良い生活を図るために通るのです。また、こんな句も有りました。
夕凪や日干しちりめん終ひ時
この句も、
夕焼や日干しちりめん終ひ時
でしょうね。じっとりとした暑さでは、折角干しあがったちりめんが傷んでしまいます。
夕凪や港巡りに長き列
何もそこまでしなくても、暫く外で涼んでおれば、やがて六甲山から風が吹いて来ます。この句も夕焼の句でしょう。
季題を与えられたら、それについてもっと調べることが大切です。自分の思い込みで詠んでしまうと、今回のように的外れの句になりかねません。つまり、夕凪を夕方の静かな海面と理解したこと。早とちりと言ってもよいでしょう。一層の奮起を祈ります。
明日とは今日より良き日大夕焼 伸一路
0 件のコメント:
コメントを投稿