3講座の共通兼題「雲の峰」と「海開」が終了しました。その中からいくつかの句を選び、推敲の一助となる様なアドバイスを差し上げたいと思います。今回は六勤入門(A)講座から。
1. 渤海使着きてふ浜や雲の峰
渤海国は日本海の対岸、北朝鮮から沿海州の地に、高句麗系の民族が中心になって築いた国で、奈良時代から平安時代に掛けてたびたび我が国に使節を送って来ました。当然、その船は、新潟や富山など、昔の越の国の港に入港したので、この句は日本海の海岸に立って、その沖に湧き上がる雲の峰を詠んだもの。古代のロマンを彷彿とさせる、素敵な句です。ただ、中七の「着きてふ」の表現が窮屈です。「着きしてふ」としっかり詠んでみましょう。
例) 渤海使着きしてふ浜雲の峰
2.拉致されし荒波止みて海開
拉致をテーマにした句は、単なる時事の報告にならないように気を付けねばなりません。また、家族を拉致された家族の苦しみ、悲しみを思うばかり、内容が情緒的(抒情的)にならないように注意しなければなりません。叙事詩として表現してみましょう。
例) 拉致の海開く荒波高けれど
3.友見舞ひ眺む窓辺や雲の峰
友見舞う、と詠んだため、友の見舞いに限定された、間口の狭い句になっています。入院患者は友だけではありません。両親や姉妹兄弟も、入院することはあります。誰を見舞ったかは、読者に任せたらどうでしょう。雲の峰という季題が、それぞれの思いを語ってくれる筈です。
例) 見舞ひたる窓辺に眺め雲の峰
4.雨の中海開まださみしけり
「さみし」などの形容詞に「けり」には付きません。嬉しけり・悲しけり、も間違い。正しい日本 は「さみしかり」です。さみしくあり、の「くあり」が「かり」と変化したものです。どうしても「けり」を使いたいなら、「さみしかりけり」としましょう。最近のテレビのコマーシャルでこの間違いが見られます。見つけてみて下さい。
例) 雨の中海開まださみしかり
今日は、汀子先生宅での下萌句会で、5句全句入選、内3句特選という好成績を頂いて来ました。また後日報告します。
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