2014年8月5日火曜日

生身魂

8月前半の、3講座共通兼題の一つ、「生身魂」が終わりました。ある講座でこの兼題を「ナマミタマ」ですか、と質問した方が有りました。俳句以外ではまず使う事が無い言葉ですから、初心者には読めないのも止むを得ない事ですが、「イキミタマ」と読みます。

三省堂のホトトギス俳句季題便覧には「盆は先祖の霊をまつる行事だが、生きている霊にも仕えるという考えから盆の間に父母、目上の人などの長命を祈ってその生御魂をもてなし、祝い物を贈ったりする習慣があり、生盆とも言った。」とあります。要するに、存命の両親等の年長者・高齢者に礼を尽くすという、お盆の行事の一つであり、且つ、その対象となる高齢者もまた、生身魂と呼ばれるようになりました。角川合本歳時記には「生御魂」という表記も見られます。

兼題としては難易度の高い部類に入るのでしょう、そこそこ詠める方でも、十分な理解が出来ていなかった、というのが正直な感想です。例えば、次のような句、季題の働きをどう見るか。

     夫を立て一歩下がりて生身魂
     一合の酒を欠かさず生身魂
     五輪見る約束仲間生身魂
     二度までも三途の瀬踏み生身魂
     帰郷して隠居暮らしや生身魂
     愛犬と相似し仕種生身魂
     職退きて肩書とれし生身魂

如何でしょう。お盆という季節感が出ているでしょうか。必ずしもお盆でなくとも、という句のように思います。3講座で投じられた生身魂の句の8割が、このような高齢者そのものを描いただけ、というものでした。これに対して次の句は、お盆らしく、生身魂に対する敬愛の念が詠えています。

     敬ひて祈る長命生身魂
     四世代仏間に集ふ生身魂
     一族の心の支へ生身魂
     生身魂母在さばこそ集へたり
     健やかにいついつまでも生身魂

生身魂はお盆に特化された季題であることを忘れてはなりません。春の生身魂等というものはないのです。季節感は俳句の命です。

     集ひたる孫や曾孫や生身魂    伸一路

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