金沢の征一様から、句をお送り頂きました。二つのグループにお出しになった句を纏めてご紹介します。
薄もやのかかるあかとき花大根 征一
働ける今がしあはせ花大根 同
大根の花遙かなる我が故郷 同
力まずに生きゆく事に花大根 同
大根の花をテーマに詠まれています。花大根という季題の働きを味わって下さい。特に最後の句、カトレア等の上品な室花では、こうは詠めません。庶民的な、平凡な花大根という季題の働きです。平凡な事を平凡に詠むことの大切さを教えてくれる句です。
朧の灯空に積み上げ勤しめる 征一
都会のビルの残業風景でしょうか、朧の灯空に積み上げ、という表現が素敵です。3階建てや5階建てのビルでは、空に積み上げ、とは言いません。高層ビルであることが分かる、省略の効いた句です。勤しめる、という表現で、それぞれの窓にある人々の営みが見えて来ます。無機質な高層ビルの灯を描くのではなく、そこに働く人々の喜怒哀楽を描いているのです。写生をしっかりした上で、それに対する作者の思いを、そっと言葉の裏に隠す。すると読者には、その作者の思いが透けて見えて来るのです。まさに花鳥諷詠の句、味わうべき句です。
0 件のコメント:
コメントを投稿