今日は夕方6時から、元町の県民会館で、ひょうご俳句フェスティバル実行委員会と、それに続いて兵庫県俳句協会の常任理事会とが開催されました。県下8結社の主宰・副主宰方が集まり、諸案件を協議し、7時半に終わりました。仕事が終わった夜に集まる、というボランティア精神で維持されています。ボランティアですから、飲食や手当、交通費の支給などは一切ありません。自分の利益に直結しなければ協力しないという社会的風潮が強い中で、県俳句協会のこのボランティア精神は立派なもの。先人達のご苦労の賜物だと思います。
さて、ある句友が亡くなって5年になります。その方の句集を手に取って、パラパラとめくってみました。
あちこちに富士ある国や初日の出
屠蘇祝ふ李白は一斗詩百篇
ひむがしの野にかぎろひと歌ひ初む
福笹を襟に立ち読みしてゐたり
あたたかき残り戎の雨となる
餅花を飾る町家の古格子
風花の輝きて舞ふ朝かな
その句集の名は『富士』。ご自分の俳句と俳文が収められている。「昔の趣味だった山歩きと、今の趣味である俳句を結び付け、山名入りの俳句を収集しているが、その一環として富士という言葉の入った句を歳時記、地名俳句歳時記、山の俳句歳時記から四千句ほど集めた。」とある。
この四千句を分類し、季節や季題ごとに仕分け、それぞれに短い文章を添えられている。その分類は、朝夕、裏表、遠近、色別等にも及び、気の遠くなるような作業をされたのです。
にょっぽりと秋の空なる富士の山 鬼貫
獅子舞は入日の富士に手をかざす 秋櫻子
夕富士やほのかに浮かぶ花の上 播水
声涼し指さす富士の雲うすれ 哲也
等を初めとして、古今東西の、有名無名の俳人の句がびっしりと並んでいます。実に様々な方が、富士山をテーマに俳句を詠んでいる事を知らされます。
「齢七十を過ぎて人生に打ち込むものを見出せた幸せを噛みしめ、ますますの研鑽を重ね自分を高めていきたいと思う。」とあとがきに有ります。しかし、已んぬる哉、病魔には勝てなかった。句集『富士』は、故人の俳句活動の集大成として、実に亡くなる1週間前に刊行されました。生きておられたら、どんなに九年母を支えて下さった事か。まことに残念の極みです。その方の名は山谷陽久さん。没後5周年の12月には、偲ぶ会を催したいと思っています。
亡き人を偲ぶ句集や秋灯下 伸一路
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