ある句会で春隣という季題が出ました。何と読むでしょう。パソコンの変換ではハルドナリと入力しないと「春隣り」が出て来ません。ハルトナリでは「悠斗也」とか「張ると也」になってしまいます。しかしこの季題はハルトナリと読みます。
ホトトギス新歳時記や講談社版日本大歳時記ではハルトナリと仮名が振ってあります。角川合本歳時記では「春近し」の傍題に「春隣」がありハルドナリと読ませています。しかし角川歳時記の昭和30年版にも、昭和49年版にもハルトナリとありますから、角川でもかつてはそう読んでいたのでしょう。
講談社版日本大歳時記の山本健吉の「春近し」の解説に清原深養父(きよはらのふかやぶ=清少納言の曽祖父)の、次の歌を掲げています。
冬ながら春の隣の近ければ中垣よりぞ花は散りける (古今集)
冬の終わりの頃に、春の訪れを待つ心を詠んだ歌であり、平安時代中期から「春の隣」は詠まれていたのです。
六甲の端山に遊び春隣 年尾
芦屋川沿いにある月若公園に建っている三代句碑の句の一つですが、この句碑にはこの句の他
咲きみちてこぼるる花もなかりけり 虚子
目に慣れし花の明るさつづきをり 汀子
の、高濱家三代の句が彫られています。まだご覧になっておられない方は是非ご覧下さい。阪急芦屋川駅で下車、川沿いに南へ徒歩3分で行けます。年尾先生の句、「端山に遊び」という浮き立つ思いを、春隣という季題が語ってくれます。
今年の立春は2月4日。満月ですので、立春の満月を眺めて、一句物にしてみましょう。
手を浸す森の小流れ春隣 伸一路
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