2015年2月11日水曜日

季題の研究(早春)

「早春」という季題は、「春浅し」とどう違うのでしょう。この他にも「春寒(はるさむ)」、「余寒(よかん)」という、よく似た季題が有ります。季題が違うという事は、本意が違うという事です。今回は「早春」と「春浅し」とについて考えてみましょう。

     早春の庭をめぐりて門を出でず      虚子

     浅き春空のみどりもやゝ薄く        虚子

有名な句ですが、この二つの句の季題の使い方にヒントがあります。虚子先生には申し訳ない事ですが、季題を入れ替えてみたらどうなるでしょう。

     浅春の庭をめぐりて門を出でず (入替句)

     早春の空のみどりもやゝ薄く (入替句)

原句との違いを考えてみましょう。

     早春の庭をめぐりて門を出でず (原句)

     浅春の庭をめぐりて門を出でず (入替句)

原句の方は、春が来て、庭に出られるようになった喜びのような思いを感じますが、入替句の方は、春になったにも関わらず寒いので門を出ない、という不満のような思いを感じます。

      浅き春空のみどりもやゝ薄く (原句)

      早春の空のみどりもやゝ薄く (入替句)

春になったのに空のみどりがやや薄い、と春に対する不満のような思いを感じますが、入替句の方は早春の空の情景を、そのまま描こうという思いを感じます。

つまり「早春」は、春が来たという喜びをそのまま表現する季題であるのに対し、「春浅し」は春が来たのにまだ寒く、春の景色が整わないという、不満足の思いを表現する季題なのです。

      早春の森や散歩の歩の軽く     伸一路

今月の下萌句会で汀子先生に採って頂いた句です。早春だから歩が軽いのです。浅春の森の散歩では、歩は軽くはなりません。寒い寒いと思いながら歩くからです。

      浅春の森や散歩の歩の重く

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