先日の講座で、こんな句が出されました。
① 初蝶やひかりの中に見失う
光の中に見失う、というフレーズ見事ですが、問題は上五を「や」で切ってあること。この句は、初蝶が見失ったのではなく、作者が初蝶を見失ったのです。ここは「や」で切って間を置かず、サッと流した方が臨場感が表現できます。
初蝶を光の中に見失う
② 春光を受けて読書の昼休み
「読書の昼休み」は、「読書や昼休み」と句の流れを「や」で切ってみましょう。「や」と切って少し間を置く方が、春の昼下がりの、のんびりした感じが出ます。
春光を受けて読書や昼休み
③ 北陸に新幹線の春運ぶ
北陸新幹線が開通しました。気候的な春と、文化的・経済的な春とを掛けて詠まれたのでしょう。
「北陸に」は「北陸へ」として方向を示しましょう。「新幹線が春運ぶ」の「が」を「の」にされたのは、主格の「が」は「の」にするという定石通りで、これで良いのですが、この句の場合、「の」にすると地味な印象になります。新幹線の開通は嬉しい出来事。その新幹線が春を運ぶのですから、明るいア音を使ってみましょう。
北陸へ新幹線は春運ぶ
どの句も、助詞一つの違いで句の表現力が大きく変わります。推敲の最も難しい所です。時間を掛けて、蚕が糸を紡ぐように、一字一字を吟味しましょう。
朝寝して未だ寝足らぬ思ひかな 伸一路
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