2015年5月18日月曜日

有馬の夏鳥

有馬は、湯布院、草津と並ぶ温泉地であり、日本最古の温泉と言われている。かつては太閤秀吉が好んで湯治に赴いたところで、今でも瑞宝寺公園の中に、その湯殿の跡と称せられる場所がある。同公園の「日暮しの庭」には、「太閤の石の碁盤」という、それらしき石があり、太閤が日がな一日、この石の碁盤で碁を打っていたという。

初夏の一日、吟行で有馬を訪れた。神戸電鉄の有馬温泉駅で下車し、いつものように、この公園に向かった。著名なホテルの脇を抜け、六甲川の谷に沿って急な坂を登ること20分、若葉に覆われた瑞宝寺公園が見えて来た。この公園は瑞宝寺という古刹の跡地で、関西では紅葉の名所として有名な所だ。三方を山に囲まれているが、昨年の豪雨で土砂崩れが発生し、痛々しい状況だった。公園の中には、九年母の二代前の主宰、五十嵐播水の句碑がある。

       鶯や旅のあしたの用なき身      播水

昭和25年、虚子先生の喜寿の祝賀会に上京され、妹さんの家に泊られた時の作品である。句碑は近くの念仏寺の老師により、立派に維持・管理されている。

楓の若葉が盛り上がるように枝を重ね、白雲木の白い花房には大きな虻や黒揚羽が集まり、花を落していた。若葉の彼方から、様々な鳥の声が聞えて来た。鶯が正調に、また破調にと鳴き渡る。大瑠璃、黄鶲(キビタキ)、仙台虫喰(センダイムシクイ)など、東南アジアから渡って来た夏鳥の声も聞えていた。もうすぐ時鳥(ホトトギス)の声が降るように聞こえる季節になる。

鳥たちにとって恋の季節の真っ最中だ。バードウイークは終わったが、森林植物園などでは探鳥会が開催されている。今回の有馬の旅で見られた鳥は18種類だった。小鳥には秋の季題となっているものが多いが、夏鳥はこの時期にしか飛来しないので夏の季題だ。夏鳥の句を詠みに出かけてみよう。

      湯煙の空を自在や夏燕      伸一路

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