ある句会で、下五の最後を「て」で止める、いわゆる「て止め」の句が集団で現れた。俳句の止め方には、名詞で止める「体言止め」の他、動詞の終止形で止めたり、「かな」や「けり」などの切字で止めるのが一般的であるが、その他にも「よ」「に」「の」「を」「て」などの助詞で止めることがある。「よ止め」・「に止め」・「て止め」は比較的多いが、その他の「の止め」・「を止め」は異例な止め方とされている。
連句で詠まれる「第三」の句が「に」・「て」で止めるという約束になっているため、気を付けないと俳句を詠んだつもりが、実は「第三」の句になっていることがしばしばある。「第三」とは簡単に言えば短歌の上の句である。
俳句は連句(俳諧の連歌)の最初の句(発句)が独立し、独自に発展したもので、俳句の事をホ句というのはその名残である。「第三」の句には季題を入れず、「切れ」も用いないことになっている。つまり短歌の上の句なのである。
鈴蘭を取り巻く山気よく澄て
この句会で出た句であるが、切れが無く、且つ「て」で止まっているので、第三の句なのだ。という事は俳句ではないのである。
鈴蘭を取り巻く山気よく澄て ほのかに香る朝の静寂に
とすれば、短歌らしくなる。これに対し、原句を少し変えて、且つ「や」という切字を入れてみると俳句になる。
鈴蘭や朝の山気のよく澄て
「第三」と俳句の違いを読み比べてみて欲しい。下五が「て」で止まる句が出来た時は、特に注意が必要である。
海開く祈る心を持ち寄りて 伸一路
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