2015年12月3日木曜日

余情の思い違い

九年母の主宰に就任して以来、連用止めの事をうるさく言っています。連用止めって何なの、と思われる方も多いと思いますので、最近の雑詠選から幾つか拾ってみます。これらはいずれも下五の止め方です。

①  食進み   よく乾き   長く伸び    そつと押し   移り行き     
 
②  飛沫上げ  風に揺れ  迎へられ   鴎群れ     稲刈られ

①のグループは、どの言葉も最後が「イ」の音で終わっています。
②のグループは、どの言葉も最後が「エ」の音で終わっています。

この様な言葉は、後ろに「行く」などの動詞(用言)を連ねるので連用形というのですが、動詞の他「たり」や「て」を連ねる事があります。例えば①のグループは、食進みたり、よく乾きたり、長く伸びたり、そつと押したり、移り行きたり、となります。②のグループも同じように「たり」を付けてみて下さい。

ところで、連用止めは中途半端な感じがします。それは、今述べた「たり」が欠けているからです。本来有るべきものが無いから、中途半端な感じがするのです。この中途半端な感じを、平明余情の余情感であると思い違いをしている方が沢山居られます。

俳句は短い文芸ですから、中途半端な感じは嫌われます。俳句は断定の文芸とも言われます。言い切ることによって、短歌との差別化が出来るのです。中途半端な五七五は俳句ではなく、この短歌の上の句なのです。短歌の上の句は、五七五であっても、俳句ではありません。

下五を連用止めにするならば、短歌の上の句にならないように、一句に切れを入れる事です。逆に言えば、切れを入れずに連用止めにすると、短歌の上の句になり易いのです。しっかり言い切ることによって、五七五を俳句にしましょう。
  
       大綿の青き光となりて飛び・・・・・「飛び」が連用止めです。

       大綿の青き光となって飛び 高く舞ひたる冬の大空   詠み人知らず
      
       大綿の青き光となって飛ぶ     伸一路   
    


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