先日、九年母の雑詠選をしていて、こんな句に出会いました。
料亭の品書きふえて深む秋
何も問題が無い、素直に詠んだ句です。この句のように、中七の最後を「て」とする句は良くあります。然し、何となく説明の匂いがしませんか。こうだからこうだ、と。料亭の品書きが増えたので秋の深まりを感じたと、秋の深まりを感じた理由を説明しているような感じがします。その原因は「て」という助詞にあります。
この「て」という助詞は接続助詞と言って、前後の文章を原因・理由(・・・ので)で接続します。この句で言いますと、品書きが増えたので、秋の深まりを感じました、と説明をしている訳です。これがこの句の説明感の原因になっているのです。
では、この説明感を除くにはどうすれば良いでしょう。それは「て」を使わずに、軽い切れを保ちながら前後の文章を繋げば良いのです。
料亭の増ゆる品書き秋深む
これでどうでしょう。説明感が抜けたでしょうか。品書きそのものを見つめて、増えたよとだけ述べています。こうすると、秋深むという季題が、自動的に働いてくれます。自動的ですから、取扱説明書が要らないのです。
中七の最後を名詞にして下五の季題に繋げると、説明感のない、すっきりした句が出来ます。試してみて下さい。
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