2018年2月12日月曜日

「ゆるりと」の句

 寒い日が続きます。山形県では4mを越える積雪とか。雪の重みで木造住宅が倒壊する被害が出始めています。コンビニやスーパーに荷物が届かず、食料に支障を来たす地域があるとか。積雪の多い地方の皆様にお見舞い申します。こんな状態がいつまで続くのか心配です。
 私が住んでいます芦屋では、時折風花が舞う程度で、雪らしい雪は降っていません。ベランダのフレームの中ではルッコラが育ち、室内では胡蝶蘭が沢山花を付けています。雪国の方には申し訳の無い天候です。
 さて、句会に出ますと、「ゆるりと」という副詞を用いた句を、特に最近よく目にします。句会に出た句を例に上げますと、
    寒鯉の尾鰭ゆるりと動くのみ
    初手前ゆるりと美しき裾さばき
のような句です。句の内容は良く理解できます。取り立てて難の無い句ですが、私は頂かなかった。その理由はこの「ゆるりと」という副詞に有ります。どこが問題なのか考えてみましょう。
 掲句の1句目、寒鯉の動きに注目しましょう。寒鯉は素早く動き回りますか。ゆっくり動きますね。これが寒鯉の動きの常識です。2句目、茶室ではどのように動きますか。ゆっくりした所作ですね。ばたばたと走り回る茶人は居ません。これが茶室の所作に対する常識です。寒鯉の動作に対する常識、茶室の所作に対する常識というものがあり、どちらもゆっくり動くと云うことです。
 そこで掲句に戻ってみましょう。「ゆるりと」が必要ですか。寒鯉も初手前も、どちらもゆっくりとした動きというものが常識として分かっていますから、殊更に「ゆるりと」と言わなくても良いのです。つまり、「女の女学生」と同じことを無意識の内にしてしまっているのです。「ゆるりと」の4音を利用して、他の事を詠んでみましょう。例えばこんな風に。
    寒鯉の尾鰭の揺るる命かな
    初手前若きおみなの裾さばき 

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