2020年3月18日水曜日

今日の二句  その25

とある句会での句です。

楽しげに水を跳ぬ石春の川

「跳ぬ石」が窮屈です。加えて、「跳ねる」の文語体「跳ぬ」が終止形でありながら、石という体言(名詞)に接続しています。体言に接続するのは連体形ですが、俳句では、時折り、このように終止形が体言に接続することがあります。俳句は詩ですから、文法的には違っていても、作者の想いを表現するためには許されます。この句の場合、窮屈感を避けるためには、連体形にした方が良いと思います。もっと言えば、この部分を口語体で表現することも考えて見ましょう。角を矯めて牛を殺す、という諺がありますが、無理やり文法に当てはめたばかりに句が死んでしまう事も有ります。自分の思いを表現するにはどうすればよいか、を考えましょう。春の川という季題を殺さぬために。
    例)楽し気に水跳ねる石春の川

茎立の襞円舞曲鳴りはじむ

三、四月ごろ大根や蕪などの花茎が高く抜きんでることを茎立(くくたち)と言い、春の季題です。正月用に買った葉牡丹が、春になって茎を高く伸ばしているのを見ます。あれが茎立です。茎立の葉をスカートと捉え、円舞曲を踊ろうとしていると感じたのです。鋭い感性ですが、表現がちょっと物々しいように思います。ワルツを踊りたく、ワルツを踊らむと、などと襞の動きを出したらどうでしょう。バレーのチュチュと捉えても面白いと思います。


   

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