2020年5月16日土曜日

今日の二句  その40(連用止め①)

 先月・今月の雑詠を拝見しますと、新型コロナウイルス関連の句が圧倒的に多く寄せられています。特に、家に籠って窓から外を見て詠んだ句が多いのが気になります。いつも申していますように、俳句は情景の報告なってはなりません。特に「見たまま」では単なる報告や説明に成りかねませんので、注意が必要です。治療に心血を注いでおられる医療関係者に対する感謝の念を詠んだ句が有りますと、読者も心が温まります。この時期に俳人に求められるのは、感謝と癒しの俳句を世に発表することです。俳句は想いを詠む文芸です。
 さて、今回は、九年母雑詠選から手許に集めて来た、連用止めの句を見てみましょう。動詞の連用形で止める止め方が、十数年来、九年母で流行っていました。しかし私が主宰に就任して以来、この連用止めを徹底的に非難して来ました。その理由は、止め方が中途半端で、短歌の上の句になっているからです。短歌は俳句では有りません。

床の間を貰ひぼうたん気品見せ

 いつものように、この句の後ろに「それにつけても春は楽しき」と付けて見らたどうなるでしょう。なぜこの句が短歌の上の句になっているのか。一読して分かるように、「気品見せ」と連用形で止めてあり、切れが無いからです。切れを入れないから、亡霊のように七・七が付いて来るのです。短歌の上の句は俳句では有りません。しっかり切って俳句にしましょう。

  例)床の間を飾る牡丹の貴品かな 

チューリップ園児の歌は良く揃ひ

 この句も「揃ひ」と連用形で止めてあります。連用形で止めると、次に来る「たる」が省略された形になります。本来ならば「良く揃ひたる」と止めるところを「揃ひ」と止めるから、中途半端な止め方という印象が残ります。後味の悪さと言うか、粉薬が口の中に残ったように、すっきりしません。しっかり切ることで、このすっきり感が出ます。

  例)良く揃ふ園児の歌やチューリップ





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