個人情報保護法が施行され、個人情報の取り扱いが厳しく規制されています。住所、氏名、電話番号の三つが揃うと個人情報になりますので、句会の名簿などの取り扱いも注が必要です。ホトトギス同人名簿は平成21年1月版を最後に、九年母同人会会員名簿も平成23年6月版を最後に、それ以降は作成されていません。個人情報の漏洩が恐ろしいからです。私も現役の頃、個人情報取扱主任者の資格が必要な仕事をしていましたが、随分神経を使いました。ミスをして、神戸から岡山までお詫びに行った同僚が居りました。
ところが俳句では、上記の個人情報の3要件では有りませんが、個人的な事情を詠み込んでいる句が、日常的に見られます。例えば、次の様な句です。
襟詰めて着る母なりし藍浴衣
藍浴衣を見るにつけ、襟を詰めて着ていた母を思い出す、と詠んでいますが、読者はそんなことは知りません。読者にとって、作者のお母さんが浴衣をどのように着ようが、知った事では無いのです。個人的な事情を披歴してもらっても、「それでどうしたの」というだけの事。作者は個人的な思い出を詠んでいるだけなく、その思い出を読者に押し付けようとしています。こうなると鑑賞するどころではなくなるのです。
夫好む藍の浴衣や郡上の夜
作者の夫がどんな浴衣を好もうと、読者には関係の無い事。うちの夫は藍の浴衣が好きなのよ!と言われても、読者には甚だ迷惑な事。そんなこと知るか、と反発してしまいます。
個人的な事を詠むのを止めて、どこにでも、誰にでもある事を詠むと、誰でも理解出来、納得し共感してもらえます。平明に詠むとはこのことです。俳句は読者に共感してもらって初めて成り立つ文芸です。個人的な情報の押し付けは避けたいものです。
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