2020年7月27日月曜日

今日の二句 その55(個人情報②)

ようやく梅雨が明けそうな天気図になって来ました。太平洋高気圧が日本列島に張り出してくると、梅雨前線が日本海へと押し上げられ、梅雨明となります。しかし、中国の長江流域の洪水はものすごく、さすがに中国だと納得しました。
さて、今回も個人情報の句についてお話します。

藍染の母の形見の古浴衣

掲句は「母の」で作者の個人情報になってしまいました。「母の」と言わず「藍染の形見の浴衣」とだけ詠んで、誰の浴衣であるかは読者の想像に任せます。読者が自分の母親の事を思い出してくれように仕向けるのです。作者が自分の母親の事を詠んでも、誰も振り向いても呉れません。古浴衣の説明だけでは、情の共有は出来ません。

一晩で縫ひたる妣や藍浴衣

妣は亡くなった母の事で、「はは」と読ませています。この句も、自分の亡くなった母のこと、つまり作者の個人情報を天下に曝しているだけです。私の母は一晩で浴衣を縫ったのですよ、との情報暴露です。そんなことを読者が聞いても、仕方がない事で、「そうですか」と答えるしか有りません。逆に、私のために一晩で縫ってくれたのですよ、と詠むと、読者はどう思うでしょう。情報の暴露ではなく、読者に情で訴えるのです。

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