2020年8月8日土曜日

今日の二句  その57(再び:切る)

 昨日8月7日は立秋でした。もう秋です。今年は、春が来ても何もなかった、夏になっても何もなかった、という思いがします。私の人生で、今年の春と夏は何だったのでしょう。このような状況の中で、もし俳句をしていなかったら、どんな人生を送っていることでしょう。俳句をやって来て幸せだと、しみじみ思う今日この頃です。

さて、再び「切る」ことについて考えたいと思います。

太陽に敗けじ上向くカンナかな

この句、先ず「敗けじ」で切れます。そして最後に「かな」という切字で切れます。俳句は短歌と呼ばれる歌から生まれた文芸です。従って、俳句も歌なのです。歌はメロディーが美しくなければなりません。この句のように、2回も切れるとメロディーが美しく続きません。

      例)太陽に敗けず上向くカンナかな

「じ」を「ず」に変えるだけで、メロディーが生まれました。


山上で打上げ花火下に見る

句の意味は分かりますが、問題点は上五の最後の「で」です。どこどこで、という表現は場所の説明をすることになります。俳句は詩ですから、場所の説明は不要です。加えて、「が」・「で」・「ば」の三つの助詞は、鼻濁音と言って、聞いていて美しい音ではありません。出来れば避けたい音です。ではこの「で」をどうするか。「や」という魔法の助詞を使います。迷ったら、取り敢えず「や」と切ってみます。

      例)山上や打上げ花火下に見る


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