2020年10月14日水曜日

ご当地俳句

 どこの句会でも、しばしば登場するのが「ご当地俳句」です。その様な特別な俳句のジャンルがある訳では有りません。要するに、作者の地元の地名や寺社仏閣などを詠み込んだ句の事です。例えば最近の句会でこの様な句が出されました

   播磨寺の遺跡称へて稲雀

播磨寺とありますが、読者に分かるでしょうか。地元の文物に誇りを持たれるのは結構な事ですが、読者に分かって貰えなければ、元も子も有りません。良くあるのが、ご自分のお宅の願い寺を詠まれること。私の実家の願い寺は生蓮寺ですが、地元の、それも檀家の方しか知らないでしょう。本山は永源寺ですが、永平寺としょっちゅう間違われます。紅葉とこんにゃくで有名な、と説明すると「ああ、あの」という反応が返って来ます。臨済宗永源寺派の大本山で、室町時代以来の歴史がある古刹なのですが。

   印南の空を広げて稲雀

印南だけで、どこか分かるでしょうか。兵庫県加古郡に稲美町印南があり「いなみちょういんなみ」と読みます。また、辺り一帯の平野を印南野(いなみの)と呼んでいます。和歌山県日高郡にも印南町があり、こちらは「いなみちょう」と読みます。全国にはもっと他に、印南と名の付く地域が有るかもしれません。いずれにしても、掲句の作者の思いが全国の読者に届くのは難しいと言えます。

俳句には、全国の誰にでも分かる、という普遍性が必要です。東大寺や延暦寺、富士山や比叡山のように、誰でも知っている名称は使えますが、これは無理かなと思う固有名詞は避けた方が良いでしょう。

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