2020年10月21日水曜日

平仮名で書く

 ある句会での事、廻って来た清記に次の句が有りました。

  さわやかや声聞くようなメール来る

読み始めた瞬間、あっと思ったのです。さわやか・・・これで良いか。正しい表記は「さはやか」です。その他にもこの句は「聞くような」と表記してあります。「や」と文語体の助詞がありますから、こちらも文語体で「聞くやうな」とするのが正しい。それはさておき、少なくとも季題・季語の表記を間違うのはまずいこと。いつも句会でお話していますように、歳時記の表記通りに書くのが原則です。漢字が多くなりすぎて句が堅くなるから、と思うのならば、季題以外を全部平仮名にされたら宜しい。変に気を遣って、句を駄目にしてしまう。角を矯めて牛を殺す、の譬え通りです。歳時記に漢字で書いてあれば漢字で、平仮名で書いてあれば平仮名で書けば良いことです。

一番良くないのは、表記の誤りを無視して「これは良い句だ、その通りだ、共感した」と感動してしまうことです。感動する前に、表記の誤りが無いか、文法は正しいか、漢字は間違っていないかなど、外形的なチェックをしっかりすることが大切です。次の句はどうでしょう。

    もみじ山燃えるを湖にしずめけり

「もみじ」を見た瞬間で、この句は終わりです。「もみぢ」が正しい表記。どんな名句であっても、これで終わり。「もみじ」と読んだ瞬間、選者の視線は、隣の行に飛びます。紅葉と書いておけばよかったのに、惜しいな、と思いながら。

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