2020年12月19日土曜日

木の葉髪考

 木の葉髪という初冬の季題があります。先日、雑詠の選をしていましたら

     オリーブ油を塗り飲みもして木の葉髪

という投句が有りました。その他にも、同じような発想の句がかなりありました。

木の葉髪という季題から、年齢からくる髪の毛の衰えを詠んでいます。しかし今一度歳時記を読み直してみましょう。ホトトギス新歳時記には「ようやく冬めくころ、木々の葉が落ちるように、人間の毛髪が常よりは多く抜けるのをいう」とありますが、年齢からくるとは、一言も言っていません。角川合本歳時記には「冬の抜け毛をたとえていうことで、十月の木の葉髪などともいわれる。人間の頭髪が、特別、初冬に多く抜け落ちることはないのだが、木の葉の落ちるころにはそれを意識することが多く、冬の季節感とあいまって侘しさを感じる」とありますが、「季節感とあいまって」であり、どこにも「老いからくる」などとは書いてありません。

夏の間に強い紫外線に当たった頭髪が弱って、秋から初冬にかけて抜ける、いわば生理現象なのです、鳥だって、夏羽から冬羽に生え変わるのです。髪が少しくらい多めに抜けても何ら不思議ではありません。

それを事更に高齢と結びつけるのは、一種の「勇み足」のようなものです。初冬の季節感をしっかり出すことが大切です。オリーブ油など塗らなくても飲まなくても大丈夫。年寄じみった句を詠むのは止めましょう。要は、木の葉髪という季題の持つ季節感をしっかり詠う事です。因みに、播水には、私の調べた限りでは、木の葉髪の句は有りません。  

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