先日、住吉大社の松苗神事献詠俳句の選者会(最終選考会)が開催され、天・地・人の入賞3句と佳作10句が決定しました。私を含めて4名の選者が丁々発止の議論を尽くして、それぞれの句の順位を決めて行きましたが、最終選考に残った句の中にも、疑問符の付く句が幾つか有りました。
例えば、「松植う」という言葉を使った句です。松を植えるのは、別に4月に限った事ではありません。公園が整備され、松を植えよう、杉を植えようということになります。根が付きやすい時期が選ばれることは有っても、春にしか植えないということはないでしょう。従って「松植う」ではなく、「松の苗木植う」と正確に詠まないと、季節感は出て来ないことになります。「苗木植う」が春の季題だからです。
その他、「苗植う」という言葉を使った句もありました。この言葉はホトトギス新歳時記にも角川俳句大歳時記にも見当たりません。私の持っている歳時記では唯一「現代俳歳時記」にあり、「苗床で育った苗を畑や庭に移植すること」と説明があります。しかしこの「苗植う」という言葉には、胡瓜や茄子、朝顔や糸瓜の苗の感じがあり、松の苗木とするには、ちょっと無理があるように思います。松は樹木であり、「苗木植う」という季題が別にあるからです。
ホトトギス新歳時記には「朝顔苗」や「胡瓜苗」・「茄子苗」等、個別の苗の季題が有り、これを上手に活用すればそれぞれの「苗植う」の句が詠めます。「苗木植う」と「苗植う」との違いを理解して、松苗神事の献詠俳句に応募して頂きたいと思います。
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