伝統俳句系の結社・句会では、季節を表す言葉を季題と呼びます。一般的に言う季語とは違って、歴史の中で濾過され磨かれてきた言葉を季題と呼び、歳時記の見出しとして並んでいます。季節を表す季語は無数にありますが、その中から特に選ばれた言葉、日本人にとって印象の深い言葉を、季題と詠んでいます。
これに対して、伝統俳句系以外の結社・句会では、季節の言葉は一般的に季語と呼んでいます。言葉の選定基準が、より厳密かそうでないか程度の相違だと思いますが、混同されることもしばしばあります。季節の言葉の呼称として学校で習うのは季語ですから、私は相手を見ながら、適宜使い分けるようにしています。俳句を始めようかなと思っている方に季題などと難しいことをお話しても分からないでしょうし、「俳句は難しいからやめておこう」と思われたら、何にもなりません。先ず相手の心を俳句に引き付けることが、愛好者を増やして行くためには大切だと思います。
さて、季題の位置という変な題を付けましたが、一句を仕立てる中で、季題をどこに置くかという問題を考えてみましょう。
五月闇句碑読みづらき城址かな
ある句会での句ですが、いきなり「五月闇」という季題が上五に登場します。これですと読者は「なんだ、五月闇の句か」と悟ってしまうのです。これを例えば、
読みづらき城址の句碑や五月闇
と詠むと、下五を読むまで、読者が興味を持ち続けてくれ、最後に「ああ五月闇か、なるほどな」と悟ってくれます。タネ明かしをしてからの手品は、面白くありません。読者の興味を最後まで掻き立てておいて、タネを明かす。こんな事も、作句技法の一つとして活用してみましょう。
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