梅雨末期の大雨が降り続いています。今日は九州の鹿児島、宮崎、熊本の各県に大雨特別警報が出されました。その後、通常の警報に変更されましたが、各地で被害が報告されています。読者の皆様には、被害はなかったでしょうか、案じております。もう二・三日で天候が回復するとも報じられています。後しばらくの辛抱です。京都では祇園さんの「山鉾建て」が始まりました。大文字の火床の準備も始まっています。もうすぐ梅雨が明け、本格的な夏を迎えます。
さて今日は、上五の助詞の省略について考えてみましょう。ある俳句講座での句を参考にさせて頂きます。
(イ)人住まぬくずれ土塀の青梅かな・・・人住まぬ・・これで無理はありません
(ロ)磯暮れて安堵のあぶく蟹の穴・・・・磯暮れて・・これも問題ありません
(ハ)父母在さぬ盛夏の実梅熟るるまま・・父母在さぬ・これも問題ありません
(二)色付きて枝より落つる実梅かな・・・色付きて・・これも問題ありません
(ホ)水漬かり沢蟹掴む小さな手・・・・・水漬かり・・窮屈です
(へ)砂潜る蟹の目玉に波優し・・・・・・砂潜る・・・この句も窮屈です
以上の句の上五の叙し方で、(イ)から(二)までは無理を感じませんが、(ホ)と(へ)の上五は、何か窮屈な感じがします。どこが違うのでしょう。
(イ)から(二)までは、名詞と次に来る動詞の間に「が」が省略されています。例えば(イ)で言えば、人・が・住まぬ、 (ロ)では 磯・が・暮れて。(ハ)・(二)も同じです。ところが、(ホ)を、水・が・漬かりとすると意味をなしません。同様に(へ)も、砂・が・潜るとしたら俳句になりません。(ホ)と(へ)では「が」という助詞が使えないことが分かります。
それでは、(ホ)を「水に浸かり」と「に」という助詞を使ったらどうでしょう。(へ)も同じく「砂に潜る」と「に」を使えば意味が通じます。しかし、これでは字余りになるので、つい、「に」を省略してしまいます。その結果、上五が窮屈になってしまうのです。
この事から、難しい文法は別にして、俳句の上五に置いて名詞と動詞を「が」で繋げる場合は「が」が省略できますが、「に」の場合は、字余りになっても「に」で繋ぐか、句全体の構成をやり直す方が良いことが分かります。例えば(ホ)は、「水漬きつつ」とするのも一つの方法です。自分の感動や思いを読者に正しく理解してもらうためにはどう詠めばよいか。僅か一字の事で意味が通じないことがあります。特に「が」や「に」の助詞の使い方には注意が必要です。その他、「を」・「は」・「へ」等の助詞も慎重に吟味しましょう。たかが一字、されど一字、です。
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