2021年8月30日月曜日

切れを入れる

 先日のある句会で、次の句が出されました。

   飛行機の灯の紛れたる星月夜

星月夜が季題で、句の意味は良く分かるのですが、星月夜の説明をしています。兼題が星月夜だからと言って、星月夜を詠んでは俳句にはなりません。星月夜と言う現象を、五・七・五の形に言葉を並べて説明しているのです。俳句と言う文芸は、季題を説明するものではありませ。兼題に出た季題を説明して、これで投句する俳句が出来たと思うのは間違いです。いつも言いますように、俳句は季題を説明するものではなく、季題を使って自分の思いを読者に伝えるものです。季題は詠むものではなく、活用するものです。

そこで掲題の句を考えてみましょう。この句は何を詠もうと思ったのでしょう。夜空を見上げたら、飛行機の灯が見え、その灯が星月夜の星の光に紛れ込んで、見えたり見えなかったりしていたのでしょう。飛行機の灯が星の光に紛れていたことに感動したのです。ところが掲句はその感動を詠まずに、星月夜の有様の説明をしてしまったのです。どうすれば俳句になるでしょうか。答えは、切れを入れることです。

   飛行機の灯の紛れたり星月夜

これで切れが入りました。「紛れたる」を「紛れたり」として、切りました。違いが分かるでしょうか。切れを入れることによって、そこに一句の感動の高まりを作るのです。間を取るということです。この違いが分かるかどうかで、今後の俳句人生が変わって来ます。


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