この時期になりますと、あちこちの句会で小春という兼題が出されます。兼題の無い句会でも、好天気が続きますと、雑詠の季題にしばしば登場します。紅葉が進み、どこかに秋の雰囲気が残っている時期です。未だ、冬晴れの厳しさは有りません。小春日という心地良い響きが、心を浮き立たせてくれます。
しかし春ではありません。気象的にも、気温は同じくらいかも知れませんが、湿度が違います。何よりも、思いが違います。春は、生命力が豊かでエネルギーに富んでいます。成長が頂点に達する夏に向かって、どんどん伸びて行こうとする力が有ります。
では、小春はどうでしょう。冬の入口です。全ての物が凍り付く死の季節に向かって進み始めた時期です。植物は実りを終えて枯れ始め、木の葉は舞い落ちます。朝晩の気温は徐々に下がり、山沿いの地域では曇りの日が多くなって時雨が降り始めます。そんな時期に、朝から良く晴れた日に恵まれますと、蒲団を干したり、冬服を整えたりと、本格的な冬の到来に備える準備をします。「今日は暖かくて助かるね」という一日、それが小春の日です。
小春を詠んだ、ある句会の句です。
里山の遊歩楽しむ小春かな
踏み込んで弾むペダルや小春空
どちらの句も勢いが有って、
里山に楽しむ遊歩春一日
踏み込んで弾むペダルや春の空
でも句になります。「楽しむ遊歩」「踏み込んで弾む」がキーワード。小春にしてはエネルギーが強すぎる感じがします。小春で句が詠めたら、春の句になっていないか、元気が有り過ぎないかをチェックしてみましょう。
玉の如き小春日和を授かりし 松本たかし
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