寒い冬の夜は熱燗におでん。寄鍋と並んで、おでんは日本の食文化の冬の定番ですが、身近な食べ物であるだけに、川柳調になったり、単なるおでんの説明になりやすいという問題が有ります。俳句は詩ですから、川柳調の句や、説明の句は俳句ではありません。
旨かりし二日煮込みのおでんかな
薄出汁に具の味深く関東煮
これらは最近の句会で投じられた句です。残念ながら、おでんそのものを詠んでしまっています。つまり、味とか形とか煮込み具合などの、物(もの)を詠んでいるのです。しかし俳句は季題を詠む文学です。おでんという季題を詠むとはどういうことでしょう。次の句から、おでんという季題を考えてみましょう。
会社ではそれが常識おでん酒 伸一路
現役時代に、おでんをつつきながら、「お前の言うことは分かる。しかしなあ、それではカネにはならんのだ。」と上司に言われ、悔しい思いをしたことが有ります。この句から、組織に生きる悲哀が感じられる人は、おでん酒の味が分かる人です。おでん酒という物を通じて、情が詠み込まれていることが分かると思います。
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