2022年4月23日土曜日

季題の説明

 季題とは、作者の思いを読者に伝えるための仕掛けです。季題を仕掛けとして活用する文学を俳句と言う、と言い換えても良いでしょう。従って季題そのものを説明しても、俳句と言う文学にはならないのです。

ある句会で次の句が出されました。

  舗装路の透き間を埋める春の草   

季題はもちろん春の草ですが、この句は春の草そのもの、つまり季題そのものを説明しています。春の草が舗装路の透き間を埋めています、という説明です。では季題を仕掛けとして使うには、どう詠めばよいでしょう。作者は、舗装路の透き間を埋めているということは、それだけ春の草には強い生命力があると思ったのです。ならば「舗装路の透き間を埋める逞しい生命力が有るのですよ」ということを五七五の句にして読者に伝える、これが俳句という文学です。

掲句を俳句にするためには、中七の最後を切ってみることです。

  舗装路の透き間を埋めて春の草

中七を「埋めて」と切ることで、上五・中七の思いが凝縮されます。そのタイミングで「春の草」と季題を置く(=仕掛ける)と、「あっ、なるほど」と読者は納得してくれ、作者の思いが伝わるのです。但し、春の草と仕掛けるか、夏の草と仕掛けるかは、作者の感性で決まります。

1 件のコメント:

  1. ありがとうございました。
    よく説明句と聞きますが、ただの一文字が全く違う働きをしていることがご説明からも理解できました。
    また季語の使い方も感性というのも分かりやすかったです。

    返信削除