2023年10月18日水曜日

「名残の空」という季語

 俳句雑誌「俳句四季」に『季語を詠む(選者競詠)』という欄があり、雑誌社から依頼された季語を、俳壇『四季吟詠』の選者が交代で詠んだ俳句が掲載されています。私も3.6.9.12月号の俳壇の選を担当していますので、三月ごとに俳句を提供しています。9月号は「鵲(かささぎ)」という題でしたが、こんな題は初めてで、苦労しました。

      石棺に深まる謎やかちがらす   伸一路

鵲は秀吉の朝鮮出兵の際に「勝ち勝ち」と鳴く縁起物として、加藤清正が朝鮮から日本に持ち込んだと言います。以来、九州北部に定着しています。鳴き声から「勝ち鴉」と呼ばれるようになりました。私は学生の頃訪れた吉野ヶ里遺跡の近くで見たことがあります。この句は吉野ヶ里遺跡で最近、石棺が発見されたという記事を読みましたので、そのイメージで詠んだものです。

今年の12月号は「名残の空」という季語で詠むように依頼がありました。こんな季語、ご存じですか?ホトトギス新歳時記はもちろん角川合本歳時記にもありません。ところが角川俳句大歳時記にありました。例句は茨城和夫先生の句が一句あるのみ。スマホで検索し、ようやく2句が見つかりました。まさに超レアな季語です。

説明によると、名残の空とは大晦日の空の事で、見上げた時に感じる、一年を閉じる感慨を詠むとのこと。掃除が終わって、雑巾を絞りながら見上げた空。この一年間の間に起こった様々な出来事を回想して、しみじみとした思いに浸る。そんな空をどう詠むか。12月号には私を含めて十数名の選者が俳句を発表します。皆様も是非、この題で詠んでみて下さい。

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